中小企業のWordPressアクセシビリティ対応|5つのステップ | 東京都の墨田区にあるホームページ制作・Web制作・イラスト・デザイン制作会社 TenCy株式会社
2026.9.16

中小企業のWordPressアクセシビリティ対応|5つのステップ

「Webアクセシビリティ」という言葉を目にする機会が、ここ数年でぐっと増えました。とはいえ中小企業の経営者の方からすると、「大企業や役所の話でしょう?」という感覚もあるのではないでしょうか。

今回は、WordPressでサイトを運用している(あるいはこれから作る)会社にとって、何をどの順番でやるのが現実的なのかを、制作と運用の現場目線で整理していきます。基準の解説ではなく、「明日の更新から何を変えるか」に落とし込むのがゴールです。

やることは、大きく3つです

  • 2024年から義務になったのは「合理的配慮の提供」であって、サイトの対応そのものではありません
  • 順番が大事です。テーマの土台 → 日々の更新ルール → 続けて確認する仕組み
  • いちばん効くのは、真ん中の「日々の更新」です。ここはお金がかかりません

そもそも、うちも対応しないといけないのか

義務になったのは「合理的配慮」、Web対応は「環境の整備」

2021年に改正された障害者差別解消法が2024年4月1日に施行され、民間事業者による合理的配慮の提供が、それまでの努力義務から法的義務になりました。ここはよく報道された部分です。制度の全体像は、政府広報オンラインの解説にコンパクトにまとまっています。

一方で誤解されやすいのですが、「自社サイトをアクセシビリティ対応させること」が直接義務化されたわけではありません。同法が事業者に求めていることを整理すると、こうなります。

求められること民間事業者の位置づけ
不当な差別的取扱いの禁止義務
合理的配慮の提供義務(2024年4月1日から)
環境の整備努力義務

Webアクセシビリティ対応は、このうち「環境の整備」にあたります。合理的配慮は、個別の申し出を受けて対応するものです。環境の整備は、そもそも申し出をしなくても使える状態を先回りして用意しておく取り組み、という位置づけになります。

「取りこぼしているお客様」は数字に出てこない

サイトが読みづらくて離脱した人は、問い合わせも来ませんし、クレームも来ません。アクセスログには「来て、すぐ帰った人」としてしか残らないため、機会損失として認識されにくいです。

しかも対象は障害のある方だけではありません。

  • 老眼で小さな文字がつらくなってきた経営者・購買担当者
  • 屋外の明るい場所でスマホを見ている人
  • 片手が荷物でふさがっている人
  • 通信環境が不安定な場所で見ている人

BtoBの取引先にも、地域のお客様にも、こうした状況の人は普通に含まれます。アクセシビリティは「福祉的な配慮」というより、使いやすさの土台です。見出しの構造を整える、画像に説明を入れる、リンクの文言をわかりやすくする。こうした作業は、検索エンジンがページの内容を理解する助けにもなります。順位が上がると約束できるものではありませんが、問い合わせのハードルを下げるという意味でも、無関係な投資ではありません。

WordPressだから楽な部分と、そうでない部分

まず、目安になる基準だけ押さえておきます。国際的な指針に WCAG というガイドラインがあり、日本ではこれをもとに JIS X 8341-3 という規格が定められています。適合レベルはA / AA / AAAの3段階。実務では「レベルAA」を目標にするのが一般的です。ひとつ補足すると、現行のJIS(2016年版)が対応しているのはWCAGの少し古い版(2.0)です。これから作る・直すなら、最新のWCAG 2.2まで視野に入れた要件にしておくと、数年後の作り直しを減らせます。

WordPress本体は、新しく書かれるコードについて「WCAG 2.2 レベルAA」を基準に掲げており、専門チームが管理画面や標準テーマの改善を続けています。ここは楽な部分です。ただし、これはあくまで本体の話。テーマ・プラグイン・日々の記事まで含めた「サイト全体」が自動で適合するわけではありません。

そうでない部分の代表が、テーマ選びです。公式テーマディレクトリには、レビューを通ったテーマに付く「アクセシビリティ対応(accessibility-ready)」タグがあり、選定の目安として便利なのですが、この要件が2026年、15年ぶりに全面的に見直されました。旧要件のままでは新要件を満たさないと公式に明言されており、期限は一度延長されて2026年9月30日まで。それまでに再審査を申請していないテーマは、10月1日以降、ディレクトリの一覧に表示されなくなる予定です(WordPress公式アクセシビリティチームの告知/英語)。

ちなみに、私たちがよく提案する Snow Monkey や unitone は、公式ディレクトリではなく開発元のサイトから配布されているテーマなので、このタグの仕組みの対象外です。タグが付いていないから駄目、という話ではありません。ディレクトリの内外を問わず、そのテーマがアクセシビリティにどう向き合っているかを個別に見て選ぶしかない、ということです。テーマ選定やリニューアルを検討しているなら、そこまで確認してから決めるのが安全です。

今日からできる5つのステップ

ステップ1:まず現状を測る

どこから直すか考える前に、まず今の状態を見てみましょう。いちばん簡単なのは、Googleの PageSpeed Insightsを使用することです。ページを開いて自社サイトのURLを入れるだけで、表示速度と一緒に「ユーザー補助」のスコアが100点満点で出ます。インストールも設定も不要です(Chromeの検証機能にある Lighthouse と同じ仕組みです)。

ただ、自動チェックで見つかるのは問題の一部です。キーボードのTabキーだけで問い合わせフォームまでたどり着けるか。これを自分で試すだけでも、スコアには出ない発見があります。

ステップ2:テーマとデザインの土台を点検する

ここは基本的に制作側の領域ですが、判断のポイントは押さえておく価値があります。

  • 文字色と背景色のコントラストを確保する(通常サイズの文字なら4.5:1以上が目安)
  • 文字サイズを200%に拡大しても、情報が欠けたり操作できなくなったりしない
  • 色だけで情報を伝えない(例:必須項目を赤色だけで示さず「必須」と文字でも書く)
  • キーボード操作時に、いまどこを選択しているかが見えるようにする

最後の項目は、見た目を整える都合で選択枠を消してしまっているサイトが少なくありません。デザインのためにキーボード操作を犠牲にしていないか。ここは確認しておきたいところです。

ステップ3:日々の更新ルールを決める

WordPress運用でいちばん効くのがここです。テーマがどれだけ優れていても、記事の作り方次第でアクセシビリティは簡単に崩れます。逆に言えば、更新のルールを整えるだけで、追加投資なしに改善できる部分がかなりあります。

  • 画像の代替テキスト(alt):画像の内容や役割が伝わる説明を入れる。装飾目的の画像は空にする
  • 見出しは正しい階層で:文字の大きさで選ばず、H2→H3の順に使う
  • リンクの文言を具体的に:「こちら」ではなく「料金プランの詳細を見る」のように、リンク先がわかる書き方にする
  • 動画には字幕を:音声だけで伝えている情報を、文字でも用意する
  • 表は表ブロックで:表をキャプチャした画像を貼らない
  • PDFに頼りすぎない:作り方によっては、読み上げソフトでうまく読めないPDFになりがち。案内の要点はページ本文にも書く

これを口伝えにせず、A4一枚程度の「編集ルール」として社内に残すのがおすすめです。担当者が交代しても品質が落ちません。参考資料としては、デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」が使いやすいです。行政向けの文書ですが、専門用語を避けて図解中心に書かれており、更新担当者の教育資料としてそのまま参考にできます。

ステップ4:プラグインは「補助輪」として使う

アクセシビリティ系のプラグインは山ほどありますが、役割はだいたい2つに分かれます。

役立つのは、チェックを支援するタイプ。
たとえば Accessibility Checker(Equalize Digital社)は、記事を保存・公開するたびに自動でチェックが走り、altの欠落などの問題を編集画面にそのまま表示してくれます。無料版でも投稿と固定ページなら回数の制限なくチェックできます。ただし、実績や商品などのカスタム投稿タイプは無料版の対象外です。問題のある箇所が画面上でわかるので、更新担当者のセルフチェックには十分使えます。老舗の WP Accessibility にも、alt未設定の画像を知らせてくれる機能があります。編集画面での警告表示のほか、メディアライブラリで未設定の画像を一覧できるので、すでにアップロード済みの画像を棚卸しするときにも使えます。

慎重に考えたいのは、オーバーレイ型。
サイトに「アクセシビリティメニュー」を後付けし、文字の拡大や配色の変更をワンタッチでできるようにするツールです。便利な場面もあるのですが、ページ側に残っている問題——altがない、見出しの階層がおかしい——を根本から直してくれるわけではないので、これを入れただけで「対応済み」とは言えません。米国では2025年、AIで自動的にWCAG準拠にできると謳っていたベンダーに対し、FTC(連邦取引委員会)が誇大な表示だとして制裁を含む命令を出しました(FTCの発表/英語)。「入れるだけで準拠」という売り文句とは、それくらいの距離感で付き合うのがちょうどいいと思います。

プラグインを増やすほど、更新の手間も増えます。土台(テーマ)と運用(コンテンツ)が主役で、プラグインは補助輪。この順番は変えないほうがうまくいきます。

ステップ5:方針を公開して「続く形」にする

ある程度整理できたら、アクセシビリティ方針の公開も検討してみてください。「どの基準を目標に、どこまで対応しているか」を自社サイトで示すものです。社外に姿勢を伝えられるだけでなく、社内でも「どこまでやるか」の合意ができるので、判断がぶれなくなります。

あわせて、誰が・どのくらいの頻度で確認するかも決めておきましょう。年1回でも、リニューアルのタイミングだけでも構いません。決めていないと、たいてい何も起きません。

限られた予算なら、どこから手をつけるか

ここまで挙げた項目を一度に全部やろうとすると、たいてい途中で止まります。実際にサイトを組んで、公開後の更新まで見ている立場から言うと、順番のつけ方でかかる手間はかなり変わります。優先するとしたら、この3つです。

1. 成果に直結するページから直す

全ページを一律に見直すとキリがなく、費用も工数も膨らみます。先に手を入れるべきは、問い合わせフォーム、料金・サービス案内、予約や申込のページです。トップページの装飾部分の色を調整するより、フォームのラベルやエラー表示を直したほうが、成果への効き方は明らかに大きいです。

2. 部分改修より、作り直すタイミングにまとめる

稼働中のサイトに後から手を入れる場合、テーマやテンプレートの構造そのものに触ることになり、他ページへの影響確認に時間がかかります。リニューアルで最初から要件に含めておけば、追加の工数はぐっと小さくなります。

3. 更新のルールを文書として残す

更新担当者が総務や広報との兼務、というケースは珍しくありません。こちらでテーマ側をどれだけ整えても、記事の入れ方次第でアクセシビリティは崩れてしまいます。だからこそ、ステップ3の編集ルールを紙一枚にまとめておくのが、いちばん費用対効果の高い一手だと考えています。担当者が交代しても、そこからやり直しにはなりません。

まとめ:完璧を目指すより、今日の更新から

Webアクセシビリティは「全部やらないと意味がない」ものではありません。altを入れる、見出しの階層を整える、リンクの文言を見直す。今日の記事更新から始められることがいくつもあります。

WordPressは、公式が基準を掲げて改善を続けているCMSであり、小さく始めて運用の中で育てていくやり方と相性の良い環境です。

一方で、テーマやサイト全体の構造に起因する問題は、診断と改修が必要になるケースも少なくありません。「リニューアルを機にきちんと対応したい」「まず自社サイトの現状を知りたい」という段階からでも構いませんので、TenCyまでお気軽にご相談ください。現状の把握から、基準を見据えた設計・構築、更新担当者向けの運用ルールづくりまで、伴走してお手伝いします。

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