【図解】事業専従者給与とは?家族に給料を払って節税する仕組みを解説
目次

個人事業主としてビジネスが軌道に乗ってくると、頭を悩ませるのが「税金」です。 「家族に手伝ってもらっているのだから、その分を給料として経費にできればいいのに…」と考えたことはありませんか?
本来、生計を一にする家族への支払いは「身内での利益移転」とみなされ、経費としては認められません。しかし、一定のルールを守れば「事業専従者給与」という特例を使って、家族への給料を正当な経費にすることが可能です。
本記事では、事業専従者給与の仕組みから、節税のシミュレーション、注意点までをわかりやすく解説します。
1. 事業専従者給与とは?家族に給料を払う仕組み
通常、家族に支払うお小遣いや生活費は経費になりません。しかし、事業を本格的に手伝っている家族(専従者)に対して支払う給与を、特例として経費算入できる制度が「事業専従者給与」です。最大の特徴は、「事業主の所得を家族に分散できる」点にあります。
2. 最大のメリットは「所得分散」による大幅な節税
通常、家族に支払うお小遣いや生活費は経費になりません。しかし、事業を本格的に手伝っている家族(専従者)に対して支払う給与を、特例として経費算入できる制度が「事業専従者給与」です。最大の特徴は、「事業主の所得を家族に分散できる」点にあります。
【シミュレーション】専従者給与あり・なしでこれだけ違う(専従者給与の「最適額」シミュレーション)
以下の3つのケースで、世帯全体の手残りがどう変わるか比較してみましょう。 (※事業主の所得が600万円、配偶者が専従者になる場合を想定)
ケース①:給与を支払わず「配偶者控除」を受ける
- 配偶者の給与: 0円
- メリット: 事業主が「配偶者控除(38万円)」を受けられる。配偶者は税金・社会保険ともに0円。
- 結果: 王道ですが、事業主の所得が高いため、高い所得税率(20%など)がそのまま適用されます。
ケース②:給与を「年123万円」にする(所得税0円ライン)
- 配偶者の給与: 123万円(月約10万円)
- メリット: 配偶者に所得税がかからず、社会保険も扶養内のまま。事業主は123万円を経費にできる。
- 注意点: 配偶者控除(38万円)は消えますが、「103万円の経費」の方が節税効果は大きいです。
- 判定: 最も手堅く、リスクの低い設定です。
ケース③:給与を「年240万円」にする(所得分散を最大化)
- 配偶者の給与: 240万円(月20万円)
- メリット: 事業主の所得を大きく減らせるため、事業主の税率が一段階下がる(例:20%→10%)。
- デメリット: 配偶者に所得税・住民税がかかり、さらに社会保険(国民健康保険・年金)も扶養を外れて自己負担になります。
- 判定: 事業主の所得が1,000万円を超えるような高所得の場合、社会保険料を払ってもこちらの方が得になるケースが多いです。
判断の分かれ道:損得チェックリスト
金額を決める際は、以下の3つのステップでチェックしてください。
STEP1:配偶者控除の「38万円」と比較する
専従者給与を支払うと、配偶者控除(38万円)が受けられません。 つまり、給与を年間38万円以下に設定すると、逆に損をします。 最低でも年間100万円程度は支払う設定にするのが一般的です。
STEP2:「123万円・130万円の壁」を意識する
- 123万円以下: 配偶者に所得税がかからない。
- 130万円未満: 配偶者が社会保険の扶養に留まれる(※国民健康保険の場合は市区町村により異なりますが、一般的に負担は増えません)。
- 130万円以上: 配偶者が自分で国民健康保険・国民年金を払う必要があり、年間約30万円〜の支出増になります。
STEP3:仕事内容に見合っているか?
ここが一番重要です。 「専従者給与に関する届出書」に書いた仕事内容(例:経理・電話応対など)に対して、「他人に頼んでもその金額を払うか?」を自問自答してください。相場から大きく外れると、税務署から否認されるリスクがあります。
結論:迷ったらこの金額!
- まずはここから:年収123万円(月約10万円) 配偶者の税金負担がなく、社会保険も扶養内。手続きもシンプルで、税務署からの指摘リスクも低いです。
- 利益が出ているなら:年収150万円〜200万円 社会保険料の負担は増えますが、事業主の税率が高い場合は、世帯全体での節税額が社会保険料を上回ります。
3. 青色申告と白色申告での「決定的な違い」
家族への給与を経費にする方法は、確定申告の種類によって異なります。
| 項目 | 青色申告(青色事業専従者給与) | 白色申告(事業専従者控除) |
|---|---|---|
| 上限額 | 上限なし(妥当な金額ならOK) | 配偶者:86万円 / その他:50万円 |
| 届出の必要性 | 事前に税務署への届出が必要 | 不要 |
| 性質 | 実際に支払った金額を経費にする | 一定額を「控除」として差し引く |
青色申告の方が圧倒的に自由度が高く、大きな節税効果を期待できます。
4. 事業専従者給与として認められるための「4つの要件」
この制度を利用するには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 生計を一にする親族であること
同じ財布で生活している配偶者や子供、親など。 - その年の12月31日時点で15歳以上であること
義務教育中の中学生以下は対象外です。 - 年間6ヶ月以上、その事業に「専念」していること
他に本業がある人や、昼間学生は原則として認められません。 - 労務の対価として「妥当な金額」であること
「週3日の事務作業で月給50万円」などは、税務署から否認されるリスクが高いです。近隣のパート求人相場を参考に決めましょう。
5. 【重要】知っておくべきデメリットと注意点
非常に強力な節税策ですが、以下の「落とし穴」には注意が必要です。
- 配偶者控除・扶養控除が受けられなくなる
専従者給与を1円でも支払うと、その家族を「配偶者控除」や「扶養控除」の対象にすることはできません。給与額が少ない場合は、控除を受けた方が得になるケースもあります。 - 家族側に税金や社会保険料が発生する
家族の年収が123万円を超えると家族自身に所得税がかかり、130万円(または106万円)を超えると社会保険の扶養からも外れる可能性があります。
6. 導入までの3ステップ
- 届出書の提出 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出します。期限は給与を支払おうとする年の3月15日まで(新規開業は2ヶ月以内)です。
- 給与の支払いと記録 毎月決まった日に支払いを行い、必ず帳簿に記録します。源泉徴収が必要な金額(月額88,000円以上)になる場合は、所得税の天引きも忘れないようにしましょう。
- 年末調整 会社員と同じように、年末には1年間の税金を精算する「年末調整」を行います。
「青色事業専従者給与に関する届出書」の書き方
この書類は、いわば税務署への「予約」です。ここに書いた金額が「上限」となるため、少し余裕を持って記載するのがコツです。
記入のポイント
- 給与の定め方(月給・賞与): 「月額〇〇円」と記載します。昇給を考慮して、実際より少し多めの金額(例:20万円など)を書いておくのが一般的です。※実際に書いた額より少なく払う分には問題ありません。
- 仕事の内容: 「経理事務、請求書作成、顧客対応、清掃および商品管理」など、具体的かつ「専念している」ことが伝わるように書きましょう。
- 従事程度: 「毎日」「月20日(フルタイム)」など。他に仕事をしていないことが前提となります。
月8.8万円以上の場合に必要な「源泉徴収」事務
専従者への給与が月額88,000円(社会保険料控除後)を超えると、事業主は家族の給料から所得税を天引き(源泉徴収)し、代わりに納付する義務が生じます。
毎月のルーティン
- 所得税を計算する: 「源泉徴収税額表(月額表)」を参照し、家族の給与額と扶養親族等の数から税額を割り出します。
- 給与を支払う: 「額面給与 - 所得税 = 手取り額」を家族の口座に振り込みます。
- 納付書を作成・納税する: 原則として、天引きした所得税は翌月10日までに銀行やネットバンキング(e-Tax)で納付します
事務を楽にする「納期の特例」
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、毎月の納付を「年2回(7月と1月)」にまとめて後払いにできます。 ※給与を支払う従業員(家族含む)が常時10人未満の場合に利用可能です。
事業主がやるべきチェックリスト
最後に、これから始める方がやるべきことを整理しました。
| タイミング | やること | 備考 |
|---|---|---|
| 最初の一回 | 届出書の提出 | 3月15日まで(または開業2ヶ月以内) |
| 最初の一回 | 納期の特例の申請 | 毎月の納付を年2回にしたい場合 |
| 毎月 | 給与の振込・記帳 | 証拠を残すため「振込」を推奨 |
| 年2回 | 源泉所得税の納付 | 納期の特例を受けている場合 |
| 年末 | 年末調整 | 1年間の税金の過不足を精算 |
まとめ
事業専従者給与は、家族に支えられている個人事業主にとって、最も効果的な節税対策の一つです。
特に青色申告を選択しているなら、上限なく経費にできるメリットは絶大です。ただし、「事前の届出」と「仕事の実態」が不可欠ですので、ルールを正しく守って活用しましょう。
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